2011 Fiscal Year Annual Research Report
新聞・雑誌メディアにおけるジェンダー編成と小説――大正・昭和の言語態分析
Project/Area Number |
20720059
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
内藤 千珠子 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (20433708)
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Keywords | 文学一般 / ジェンダー / メディア / 国民国家 |
Research Abstract |
新聞・雑誌メディアにおけるジェンダー編成と、小説の言語におけるジェンダーの構造の相関に焦点をあて、大正・昭和の言説構造を分析・考察しようとするのが本研究の目的である。近代日本が国民国家として成立し、戦争や植民地主義の論理が定着してゆく過程で生じた言説の構造について、ジェンダー編成に注目し、言語態分析の方法論をとって研究を進めた。研究の過程で浮上してきたのは、近代的な物語定型の構成と、現代文学における表象の構図との節合点であった。そのため、現代小説に描き出された表象の系譜についても明らかにすることをつとめた。 大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館などを利用し、大正・昭和期の言説を資料対象として収集すると共に、復刻された大正・昭和期の刊行物を購入・収集した。それらが現代の文学状況にどのように再現しているのか調査し、文芸誌を発表媒体とした現代小説との接点について考察した。その詳細を日本近代文学会において発表し、さらに精査したのち論文化した。 また、新たに1930年代後半の文壇状況と検閲の関係性に注目し、検閲とジェンダーというテーマをもって資料調査を進めた。『改造』や『中央公論』などを調査し、メディアの言語と小説の言葉を比較して検閲が言説空間に及ぼす効果を測定しつつ、伏字の表記がもつ意味について検証を行った。この時期の移民とジェンダーの問題を具体的な主題として、女性作家の小説作品と雑誌の言説との差異と共通点を明らかにし、日韓検閲ワークショップ「近代検閲と東アジア」(於韓国・成均館大学、2012年3月17日)において、一部を発表した。日本語小説を扱った検閲研究において、従来は取り上げられにくかったジェンダー論的な観点を示したという点で、意義のある成果だといえるだろう。
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