2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720060
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
田中 幸江 二松學舍大學, 文学部, 非常勤講師 (30445720)
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Keywords | 菊亭 / 今出川 / 文庫 / 蔵書 / 公家文化 / 禁裏文庫 / 楽器 / 楽書 |
Research Abstract |
京都大学附属図書館・専修大学図書館・東京国立博物館のほか、各地の図書館・文庫の目録をもとに菊亭家旧蔵書の探索、採訪調査を行った。そこで、菊亭家歴代当主の手になる書物、筆跡・花押、蔵書印の収集を行うとともに、江戸期の「菊亭文庫」の古目録『〔菊亭文庫蔵書目録〕』に記載される書物と、現存する書物との同定作業(比較対照表の作成)を行った。 また、菊亭家歴代当主の日記の所蔵状況、残存状況を調査したが、その過程で、第21代当主今出川実種(1754~1801)が、先代の当主の日記の副本を作成していたことが分かった。実種は、『〔菊亭文庫蔵書目録〕』の作成、蔵書整理も行っており、「菊亭文庫」の生成と発展に大きく寄与した人物だったのである。現在「菊亭文庫」が一群の資料として残るのも、彼の功績によるところが大きいことが明らかになった。 さらに、第14代菊亭家当主今出川公規(1638~97)の日記『公規公記』について、伝本の調査を行い、「基礎的研究」を行った。なかでも、専修大学図書館蔵の『公規公記』は、それまで存在が確認されていなかった伝本であるが、他の伝本では欠落している万治4年(1661)1月15日の内裏炎上、天皇家の蔵書「禁裏文庫」罹災の記事を有していることでも注目された。専大本の1月15日条には、「禁裏文庫」中の楽器・楽書の名前が列挙されているが、その記載内容が、上野学園大学日本音楽史研究所蔵『禁裏御文庫楽書并御楽器之目録』や京都大学附属図書館蔵『〔禁裡楽器并諸譜目録〕』と大いに関連することが分かり、公規が近世前期の「禁裏文庫」に関与していた可能性が高いことが明らかとなった。この成果は「菊亭文庫」研究にとどまらず、「禁裏文庫」研究にも寄与するものであると考えている。
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