2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720061
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 ふみ子 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (00386335)
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Keywords | つむり光 / 大田南畝 |
Research Abstract |
天明狂歌師の伝について、本年度は四方赤良とつむり光という重要な狂歌師について研究し、その成果を発表した。とくにつむり光の伝については、天明狂歌壇第二世代において「四天王」の一人に数えられる重要人物でありながらもこれまで断片的な資料紹介や辞書的な記述以上の研究がほぼない状態であり、墓誌の記録などから生没年、父祖の情報を整理した上で、青年期の浮世絵師としての出発と以後の狂歌歴を明らかにしたことには一定の意味がある。狂歌研究上、とくに重要なのは、光の詠風が、当時の狂歌壇においては珍しく、技巧や修辞の滑稽(「詞の狂」)ではなく、内容・発想上の滑稽(「心の狂」)を特徴としていることの指摘で、天明狂歌が容易に一括して詠風を把握することの難しい多様な内実を含む現象であったことを改めて浮き彫りにした。 天明狂歌の実質的な中心人物であった四方赤良こと大田南畝については、その生涯の詳細についてはそれなりに研究が進んできたが、彼が後世に名を残した最大の要因である狂歌の詠風、歌論についてはほとんど分析が進んでいなかったが、これについて新出資料を用いて、その狂歌観において技巧の洗練が最低要件であり評価の基準であったという見通しを提示した。 幕末以後の狂歌師の掃苔記録などの墓誌記述の入力については進めては来たものの、内容の正確性の確認、内容の充実度といった観点から、現時点では公開するには至らないと判断した。現時点での成果の公開は、いわば質的研究にとどまるものとなったが、引き続いてデータを充実させ、いずれは公表できるものとしたい。
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