2010 Fiscal Year Annual Research Report
寺院文化圏から見た延慶本『平家物語』の文化史的研究
Project/Area Number |
20720062
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 准教授 (10453961)
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Keywords | 国文学 / 平家物語 / 寺院文化 / 唱導説経 |
Research Abstract |
延慶本『平家物語』の成立過程を、寺院における文筆活動と、それを促す機能を持つ仏事儀礼の場に注目する立場から考察した。 具体的には、東大寺図書館所属『応和宗論日記』の解読と、国立歴史民俗博物館所蔵『転法輪鈔』の翻刻・解題作業を進めた。未だ成果を発表する段階には至っていないが、22年度の作業を踏まえて、23年度中には論文・資料の公刊を目指す。寺院で作成された訴訟文書や唱導資料に着目する中で、それらの資料を産出する契機となる法会の場の重要性が改めて認識された。法会の場で執行された諸種の仏事儀礼とそれに伴う芸能が、『平家物語』を生み出す文化的土壌になっているという視座から、いくつかの考察を行った。 唱導の家として評判の高かった安居院流唱導の唱導書について、その文学的・文化的価値を明らかにした。唱導が、仏法を至上とする価値観のもと、世界の物事を諸カテゴリーに分類・分節する営みであったことを指摘した。さらに、そのようにして築かれた世界観が、『平家物語』を生み出す文化圏の土壌となっていたことを、建礼門院の物語に即して論じた。総じて、『平家物語』は寺院における文筆活動とそれが披露された儀礼の場の文化を吸収して成立していると考えるに至った。
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