2008 Fiscal Year Annual Research Report
古典演劇が語った「歴史」観についての研究-中世・近世の軍記物演劇-
Project/Area Number |
20720068
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
岩城 賢太郎 Ube National College of Technology, 一般科, 講師 (40442511)
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Keywords | 演劇 / 日本古典芸能 / 日本古典文学 / 中世・近世 / 能楽 / 浄瑠璃 / 軍記物 / 平家物語 |
Research Abstract |
本年度は、以下の3点について進めた。 (1) 6月に開催された、軍記と語り物研究会の企画例会「〈語り物〉の芸能と軍記」に、コーディネーター・司会者として参加した。当初の実施計画にあった口頭発表は行わなかったが、能楽・浄瑠璃の若手研究者と、室町後期〜江戸中期の演劇における、軍記物語の受容について議論し、原典である軍記物語のテキストを離れた、中世・近世演劇における軍記物の様相や、演劇における演出や上演記録等から読み取る軍記物演劇史の可能性について、知見を得た。 (2) 作品研究として、近松門左衛門作の軍記物浄瑠璃の中から、初期の浄瑠璃作品である『薩摩守忠度』と『千載集』とを取り上げ、中世演劇の能『忠度』との関連について、原典の『平家物語』テキストの影響を勘案しつつ、浄瑠璃・能楽双方のテキストとの比較・分析を行った。その結果、両浄瑠璃作品の差異は、浄瑠璃全5段中の4段目における、能のテキスト(謡曲本文)摂取の意図・方法の差異であり、両浄瑠璃作品4段のテキストの微細な差異に至るまで、近世に流布していた諸種の能のテキストが反映していると結論した。検討の結果を論文にまとめ、発表した。 (3) 浄瑠璃・能楽資料の調査・収集に当たった。地理的な事情もあり、当初の実施計画にあった、遠方の諸機関への訪問調査は殆ど行えなかった。その為、国文学研究資料館(東京)に蔵されるマイクロフィルム・紙焼写真等の閲覧・複写により、室町期書写の謡本、江戸期版行の浄瑠璃正本等、演劇テキストの調査・収集を行った。当初計画していた、関西の諸機関における演劇資料の調査は、次年度に、中国・九州地区の諸機関を対象に行う予定である。
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