2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720078
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
吉田 朱美 北里大学, 一般教育部, 講師 (30406889)
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Keywords | 美的感性 / 声 / ヴィクトリア朝小説 / George Gissing / 新しい女 / 世紀末 |
Research Abstract |
本年度は応募時の計画にもとづき、平成23年3月にYork大学で開催された第4回国際ギッシング学会において、彼の小説Thyrza(1887)およびA Life's Morning(1888)に描かれる女性の歌い手たちについての分析に焦点を当てた発表を行った。ショーペンハウアーやコントなど、ギッシングに深い影響を与えた同時代人たちの思想に言及しつつ、Thyrzaの女性主人公サーザのもつ音楽的才能には、従来の批評でいわれてきたよりも過激で革新的な要素があること、それによって彼女が、世紀末の「新しい女」の系譜に属するとみなされうることを論じ、George EgertonやKate Chopinらの作品に描かれる美的感性に富んだ女性登場人物たちとサーザとの間に見られる共通点を指摘した。今回の学会のテーマが「ギッシングにおける芸術と芸術家」であったことから、同様の関心をもつ各国の研究者と、ギッシングの作品に登場する女性音楽家の身体の描かれ方に関して有意義な意見交換の機会を持つことができた。 また、平成22年5月に東京大学で開催された"Digital Romanticisms"学会では、映画『永遠のマリア・カラス』を題材に、この作品中にあらわれるさまざまな声や音楽、機械と身体をめぐるモチーフがどのような形でE.T.A.ホフマンなどのロマン派作家の系譜を汲みながら、現代的な要素を取り入れて発展したものであるかについて論じた。
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