2011 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ東海岸におけるユニテリアニズムを中心とした宗教と性差の研究
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20720079
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大串 尚代 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (70327683)
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Keywords | スピリチュアリズム / リディア・マリア・チャイルド / ハナ・アダムズ / 女性と聖書 / 科学言説と性差 / 第一派フェミニズム運動 |
Research Abstract |
平成23年度は、資料の収集を継続するとともに、論文ないしは学会などの口頭発表の形で、これまでの研究の成果を発表し、フィードバックを受けながら研究内容を修正することを積極的に行っていった。学会発表としては、日本英文学会と津田塾アメリカ女性像研究会において発表した女性作家リディア・マリア・チャイルドに関して発表を行い、それぞれの場でオーディエンスと有益な意見交換を行った。その結果、19世紀半ばにフォシクス姉妹を発端に流行したスピリチュアリズムと当時の科学技術との関連、また第一派フェミニズム運動とスピリチュアリズムの関係性を見いだすことができた。スピリチュアリズムと女性との密接な関係性は、南北戦争後の女性参政権運動において、エリザベス・ケイディ・スタントンが支援した女性大統領候補ヴィクトリア・ウッドハルにも見ることができるため、19世紀半ば以降の女性の信仰心・宗教心を考察するための大きな足がかりとなった。 エリザベス・ケイディ・スタントンが19世紀末に出版し、大きなセンセーションを巻き起こした『女性の聖書』出版をめぐる経緯とその意義については、論文集『註釈書の世界』の一章として掲載されるにいたった。本研究はこれまでアメリカ女性文学史の中でもあまり顧みられなかった女性による聖書註釈の意義を再考する意味を持っていると思われる。 また、前年度より引き続き考察をしていた18世紀・19世紀の世紀転換期に活躍した女性歴史家ハナ・アダムズに関する論文を完成させ、2011年11月に査読付きの学会誌POEICAに投稿したところ、掲載許可をいただいた。いくつか修正すべき点が指摘されたため、論文を再度検討し直し加筆修正を行い、POEICA編集部への提出が済んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集資料の電子化およびオンデマンド出版の普及にともない、資料収集は順調に進んでいる。また、2012年3月に行った現地調査において、貴重な資料が入手できた。これらの資料およびこれまでの研究成果をもとに、すでに2012年度に口頭発表を行う機会が予定されており、また査読付き学会誌への論文投稿の予定を立てている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定は以下の通りである。1)ハナ・アダムズのユニテリアン論争についてより深く研究し、後のユニテリアン派の女性作家キャサリン・マリア・セジウィックへの影響関係を精査する。2)19世紀中盤のスピリチュアリズムの台頭と科学言説の関係性を、リディア・マリア・チャイルドおよびエリザベス・ケイディ・スタントンの作品にどのように現れているかを概観し、19世紀の女性とスピリチュアリズムの関連をまとめる。3)1860年に初渡米した福澤諭吉とユニテリアニズムについて調査する。
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Research Products
(4 results)