2009 Fiscal Year Annual Research Report
トニ・モリスンの小説における「母性」の表象と政治学
Project/Area Number |
20720083
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
戸田 由紀子 Sugiyama Jogakuen University, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (40367636)
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Keywords | アメリカ文学 / ジェンダー / 母性 / トニ・モリスン / アフリカ系アメリカ人 / 黒人女性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、トニ・モリスンの小説において、「母性」という概念、言説、イデオロギーがどのような政治的レトリックとして用いられているかという「母性の政治学」を明らかにすることにある。そのため、当該年度は以下の研究を行った。 本年度は「共和国の母」をキーワードに研究を進めた。「共和国の母」の理念が近代「母性」イデオロギーにどのような影響を及ぼしたかを考察するために次のことを検証した。19世紀に、「共和国の母」の理念がどのように発展し、広まったか。「共和国の母」の理念と当時の女性の生き方との違いや、それによって女性の生き方がどのように変わったのか。子供との関係や育児観がどのように変わったのか。資料としては"Women and Social Movements in the United States"などのデータベースや19世紀出産、授乳、子育て関連の文献や当時の新聞記事等で検証した。また、「共和国の母」の理念がどのように黒人女性に影響したかを、黒人女性政治活動家による演説や小説などから考察した。「女性が道徳的に優れていることと、育児に最もふさわしいという「共和国の母」が主張する二つの特徴や、その理念が促したさまざまな女性や社会の変革があってこそ、「母と子が容赦なく引き裂くことが奴隷制の最大の罪である」という物語装置が広まり、定着したといえる。その物語装置が、どのようにトニ・モリスンの小説において用いられているかを考察した。
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Research Products
(2 results)