2009 Fiscal Year Annual Research Report
シェイクスピア悲劇の主人公達が有していた道化的性格の究明
Project/Area Number |
20720086
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
五十嵐 博久 Toyo University, 生命科学部, 准教授 (20300634)
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Keywords | オセロー / シェイクスピア / 道化的性格 / リチャード・バーベッジ / 祝祭劇 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、シェイクスピア劇の初演舞台にてリチャード・バーベッジが演じた悲劇的主人公であるハムレット、マクベス、そしてオセローの三人の人物像を中心に、その道化的性格に関しての考察を深めた。そのうち、オセローの人物像に関する論考を、第62回日本英文学会中国四国支部大会(平成21年10月24日、於鳥取大学)にて「道化的存在としてのオセロー」と題して口頭発表し、その原稿に修正を加えたものを「道化的人物としてのオセロー」と題して『東洋大学人間総合科学研究所紀要』第12号(平成22年3月発行)pp.77-97に寄稿した。また、本論考の草稿段階のものを、シェイクスピアと現代作家の会(平成21年9月14日、於広島修道大学)において口頭発表する機会を得て、会員の方々から忌憚のない意見やフィードバックを頂戴した。本論考では、『オセロー』をその祝祭劇としての構造に注目してテクスト分析し、本劇において主人公オセローが道化的な役割を演じている事実を指摘した。 ロマン主義以降の批評言説においてシェイクスピア悲劇像の塗り替えが行われ、その過程で、悲劇の人物像も大きく塗り替わったことは、先人たちの研究からも、また、私個人のこれまでの調査からも明らかなことである。ロマン主義批評の伝統を継承する現代の人物批評が目をつむってきた一つの事実について、本研究を通じて確認することができたと考えている。 なお、本助成金による2年間の研究成果を、現在、全6章立ての英文論文の体裁にまとめている。遅くとも平成23年度にはそれを公表できる予定である。本年度公表した研究成果は、その一つの章となる重要な部分である。
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