2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720088
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
古河 美喜子 Akita National College of Technology, 人文科学系, 講師 (80462125)
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Keywords | ロバート・ヘリック / 『ヘスペリディーズ』 / イギリス / 17世紀 / 詩 / 王党派 |
Research Abstract |
近年、リーア・マーカス(Leah S. Marcus)やマージョリー・スワン(Marjorie Swann)らによって、17世紀の王党派詩人ロバート・ヘリック(Robert Herrick, 1591-1674)を単なる繊細で流麗な抒情詩人とする従来的評価が徐々に改められるようになってきている。例えば、安息日の厳守を唱え、伝統的娯楽を非難していたピューリタン達に対する、婉曲的ながらも痛烈な批判が、ヘリックの作品『ヘスペリディーズ』(Hesperides, 1648)中に読み取れることがわかってきた。王党派詩人達の「遊びの精神」が、イギリス17世紀半ばという特異な時代にあっては、政治的ファクターも持ち得ることが明らかになってきたのである。 本研究は、前述のマーカスやスワンの先行研究を踏まえ、ミクロヒストリア的観点から更にヘリックの博物学的興味の中にピューリタン社会や動乱の時代に対する当擦りを見出すことで、ヘリック研究を深化させようとするものである。詩人を取り巻く当時の情況を念頭に置いた上で、この詩人の描いた理想郷的世界がピューリタン社会とはいかに対極的な世界になっているかについて論じ、そこに込められたピューリタニズム批判のメッセージに着目する。『ヘスペリディーズ』が、水面下で王党派の政治的プロパガンダとしてどのような形で機能し得るかについて考察する。 平成20年度には、本研究を遂行するにあたり研究計画で掲げた「田園生活に隠された政治性」「博物学・民俗学的興味に隠された政治性」という二つの大きな柱とそれぞれに設定した問題点(テーマ)について、論点の整理を行った。 研究成果の一部として、いわば二つの大きな柱の前提ともなる詩人の宗教観について分析し「王党派詩人としての役割-ロバート・ヘリックのアングリカニズム-」と題した論文(近く刊行される『実像への挑戦-英米文学研究』所収)に纏めた。
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Research Products
(1 results)