2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720090
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 Chiba University, 文学部, 准教授 (40466694)
|
Keywords | ロシア / 18世紀 / 19世紀 / 崇高 / ピクチャレスク / 視覚文化 / ロシア文学 / 庭園 |
Research Abstract |
19世紀初頭のロシア文学と視覚表象の問題 20年度にモスクワのロシア国立図書館、21年度にロンドンの英国図書館において収集した、19世紀初頭のロシア、ヨーロッパにおける光学スペクタクルに関する文献に基づいて、プーシキンの小説『スペードの女王』における視覚的・光学的要素の機能を考察した論文を、東京大学スラヴ語スラヴ文学研究室の査読雑誌に発表した。18-19世紀の境目に西欧で生じた視覚概念の転換が、ロシア文化が一つの転機を迎える1830年代に書かれたこの小説に反映している点を指摘したもので、これ以前のロシア文化と視覚表象の問題を考える上で一つの指標になると考えられる。 18-19世紀初頭のロシア文化における風景表象の問題 ヘルシンキのフィンランド国立図書館において、ヴォルガ旅行記を含むV.オルローフの伝記、パーヴェル・スマローコフの『ベッサラビアへの旅』といった旅行記や、オシポフの庭園論、その他庭園論や旅行記といった内容を含む18-19世紀初頭の雑誌記事を数多く収集した。またオックスフォード大学教授アンドレイ・ゾーリン氏からは、オックスフオード及び来日時の東京において、この分野に関する諸問題や関連文献について(特に18世紀のヴォルガ沿岸への旅行記や、ナポレオン戦争期の疎開に基くロシア知識人のロシア諸地域との接触など)、多くの示唆を得た。これらに基づき、当時のロシアにおいてロシアの風景という対象がどのように認識されていったかという問題を「崇高」「ピクチャレスク」美学との関連において考察する論文を目下執筆中である。また、平行して進めているヴォルガ表象の研究は、当研究と内容的に関連が深く、2,3月に行った、エカテリーナ期-ナポレオン戦争期のロシア詩の中のヴォルガに関する研究報告にも、当研究の成果が多く反映している。
|