2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720091
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 櫻子 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (10422908)
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Keywords | 仏文学 / 美学 / 哲学 |
Research Abstract |
平成22年度は、11.「研究発表」に示すとおり、おもに国内外で出版された図書をとおして研究成果の発表を行った。これまでの研究成果を市販書に発表することにより、研究実績をより幅広い範囲の読者に示そうとしたためである。 まず、国内の読者向けに、『文学作品が生まれるとき、生成のフランス文学』(京都大学学術出版会)に「ルソーの『告白』における夜明けの光景と描写詩」と題する論文を寄稿した。この論文では、サン=ランベール、ルーシェといった詩人の手になる自然の歌について、研究代表者が行ってきた調査結果を踏まえながら、18世紀に発達した描写詩とルソーの自伝作品に見られる自然描写との関係について検討した。また、研究代表者が用いている「系列的アプローチ」という手法が、アンシャン・レジーム期のフランス文学研究にいかに応用可能であるかという解説も展開した。また、描写詩というジャンルの確立者サン=ランベールの詩作にディドロの人間論、美学的考察が与えた影響についての考察をフランスのオノレ・シャンピオン社刊行の仏語論文集『文学作品はいかにして生まれるのか草稿、文化的コンテクスト、テーマの発展』に寄稿した。この仏語論文によって、本研究課題代表者の研究実績をフランス本国の研究者にも紹介できたと考えられる。 さらに、入門書『ルソーを学ぶ人のために』(世界思想社)に、ルソーの書簡体小説『新エロイーズ』についての解説を執筆し、学部生向けにルソーと描写詩の関連についてわかりやすく紹介することを試みた。 夏にはフランス国立図書館でジャック・ドリールの後期作品にみられる自然描写と博物学との関連について資料調査をするとともに、パリ第4大学の17、18世紀フランス文学研究者と研究交流を行った。その成果は、今後大学紀要や海外の学術雑誌に論文を投稿することによって、発表してゆく予定である。
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Research Products
(3 results)