2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720093
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
玉田 敦子 Chubu University, 全学共通教育室, 講師 (00434580)
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Keywords | 修辞学 / 崇高 / エネルギー / ロンギノス / 18世紀文学 / 啓蒙思想 / 国際情報交換 / フランス:イギリス:アメリカ |
Research Abstract |
本研究においては、17世紀から18世紀にかけて修辞学理論が変化する過程を、ボワローとロンギノスによる「崇高論」の受容、感覚論哲学の発展、文化的ナショナリズムの問題など多角的な視点によって分析した。今年度は、8月に3週間、フランス国立図書館で調査を行ったほか、慶應義塾大学図書館等の資料を用いて考察を深化させた。具体的には、修辞学を「崇高」、「エネルギー」といった鍵概念を手がかりに、特定の時代的コンテキストに位置づけることにより、「言語」と「言語」を司る審級となる「法」の問題という、人文学における最重要課題に取り組んだ。 1、「エネルギー」概念については、まず、昨年度のMITにおける研究発表にもとづき、共著書を執筆した。さらに専門的な考察の成果として『アリーナ』に論文を投稿した。この論文の要点は以下のように要約される。 「17世紀には、ロゴスすなわち神のことばが自然の原理としての「エネルギー」を構成すると考えられており、人間が「ことば」を用いるときにするべきことは、ただそこにある「もの」をあるがままに正確に書き写すこと、語り手と読み手を透明なコミュニケーションで結ぶことであった。一方、18世紀には、修辞学的訓練をとおして、人間の「ことば」も「エネルギー」を生み出すことができると考えられるようになった。」 2、「文化的ナショナリズム」の問題については、日本ケルト学会において研究発表を行い、論文を執筆した。この論考の要点は以下のように要約される。 「18世紀フランスにおいて発展した近代修辞学は、英語圏に移入された。英語修辞学教科書において反復された、「『オシアン』は崇高である」という言説は、フランス修辞学における「コルネイユ、ラシーヌは崇高である」という言説と等価の行為、すなわち『オシアン』を国民的叙事詩として称賛し、民族のアイデンティティを保証する文学として承認させる行為であった。」
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