2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代イランにおける「詩の夕べ」の社会的・文化的機能の研究
Project/Area Number |
20720095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 君江 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 非常勤講師 (40466818)
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Keywords | イラン / ペルシア / 詩 / 中東 / イスラーム |
Research Abstract |
本研究の目的は、1960年以降、イランにおいて広がりを見せた詩の朗唱会「詩の夕べ」の文学史的意義と社会的・政治的機能の検証である。今年度は、60-70年代において、詩の夕べが政治集会へと変容していく過程を考察することを目的としたが、併せて、この時期の詩の夕べにおいて最も重要な役割を担った詩人であるアフマド・シャームルー(1925-2000)の作品受容に関わる研究の分析もおこなった。 1)1968年に開かれた、シャームルーの二つの「詩の夕べ」の音声資料の検証を行った。同集会での、聴衆とのやり取りや、朗唱作品の選択に対する聴衆のリクエストは、いずれも「詩の夕べ」の政治的変容を裏付けるもので非常に興味深いものであった。 2)シャームルーの愛と愛する女性を詠った詩が、文学のアンガージュマン(政治参加・社会参加)の理念に反するものとして、詩の夕べをはじめとする文学集会の聴衆や詩の読者らに厳しい批判を受けた社会的背景と作品解釈・批評の問題を分析した。さらに、シャームルー詩の「アーイダー」(詩人の妻)以前の女性像とその読みの問題については、学会で発表した。 3)「10日間の詩の夕べ」とイラン・イスラーム革命(1979年)との因果関係を検証した。同集会は、のべ8万人に及ぶ聴衆を集め、大衆デモへと発展した。その政治的・社会的背景を同集会を開催した反体制グループ「イラン作家協会」の活動と詩による語りかけが現実の政治行動に及ぼす影響力を明らかにした。
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