2009 Fiscal Year Annual Research Report
チノ語の記述調査及び周辺諸言語との言語接触・言語類型論的研究
Project/Area Number |
20720111
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
林 範彦 Kobe City University of Foreign Studies, 外国語学部, 准教授 (40453146)
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Keywords | チノ語 / 記述言語学 / チベット・ビルマ諸語 / 言語類型論 / 言語接触 / 歴史言語学 / 東南アジア地域言語学 / 中国雲南省 |
Research Abstract |
本年度は研究発表と論文投稿を中心に、チノ語悠楽方言・補遠方言の研究成果を公開した。 (1) 研究発表 2009年7月にチベット=ビルマ言語学研究会で「補遠チノ語調査報告」と題した研究発表を行った。これまで雲南民族大学の蓋興之教授が、悠楽方言との比較のために若干のデータを示した程度の報告しかなかった。この発表で、代表者が行った補遠チノ語の調査データを整理し、主に音韻論的な問題を報告し、蓋の設定した複雑な体系をより簡素に再構築ができることを示した。また7月末にアメリカ・オレゴン大学で行われた「第15回国際ヒマラヤ言語学シンポジウム」にて、チノ語悠楽方言のテンスについて発表し、チノ語悠楽方言には従来指摘されなかったテンス的対立を認める必要性を主張した。 (2) 論文投稿 本年度は4本の論文を発表した。「チノ語悠楽方言の歴史的発展について」「チノ語悠楽方言の格の体系」「チノ語悠楽方言のコピュラに関する簡単な記述」「チノ語悠楽方言の間接疑問文に関する覚え書き」である。このうち2本を英文で公表した。詳細は論文に委ねるが、最初の1本を除いて、いずれもチノ語悠楽方言の現地調査に基づいた詳細な共時的記述研究に属するものである。また最初の「歴史的発展」の論文はその名の示すとおり、チノ語悠楽方言の音韻・語形成・文法に存在する現象がいかにして生まれたか、および他の諸言語との接触により変化してきたかを考察したものである。今後東南アジア北部地域における民族接触の問題を解き明かす上で非常に重要と考えられることから、この方面での研究も合わせて進めていく予定である。 このほか、中国雲南省への現地調査1回を行った。現時点ではチノ語語彙集の作成にやや遅れが生じているが、これについては最終年度である2010年度(平成22年度)末までに間に合うよう進めていく。
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Research Products
(6 results)