2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720118
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
井本 亮 Fukushima University, 経済経営学類, 准教授 (20361280)
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Keywords | 副詞的修飾 / 結果構文 / 意味強制 / 概念意味論 / 意味範疇 / 事象投射理論 / 形容詞連用形 / 連用修飾 |
Research Abstract |
本研究では,特に副詞的修飾関係によって生じる意味強制の現象を記述し,動詞述語文における意味計算のメカニズムを明らかにしようとするものである。当初の計画通り、実証的研究および理論的基礎研究を行い、以下の研究成果を得た。 1.「日本語結果構文における限定と強制」では、日本語のいわゆる結果構文をモノのサマに関わる副詞的修飾関係と位置づけることの有効性を論じた。本論文のアプローチは英語のような個別の構文と位置づけるよりも、他のモノのサマの副詞的修飾関係との異同を考えることによって日本語の連用成分の包括的理解につながる。また、「腕が赤く腫れる」のような標準的な分析では説明できない事例を取り上げ、副詞的修飾にみられる意味強制のメカニズムを導入することによって説明される』ことを論じた。2.「形容詞連用形による副詞的修飾関係-モノのサマの修飾関係を中心に-」では副詞的修飾関係における意味範疇の整合性について論じた。副詞的修飾は連用的構文関係であるが、意味的にはモノ・コト・ウゴキという意味範疇とアスペクト的性質が交差的に関わっているのである。3.「概念構造と他領域との接点-事象投射理論の可能性-:語用論との接点:期待値を表示する構造-「Vすぎる」の事象投射構造-」では、事象投射理論というアスペクト計算理論の有効性について、「Vすぎる」の事例を論じ、[過剰]の含意が語用論的期待値として事象構造に組み込まれているという分析を提案した。これによって、程度概念を概念意味論で無理なく取り扱うことができるようになった。4.「「赤く」はなぜ「塗る」を修飾できるのか試論」では、生態心理学的知見を副詞的修飾における意味強制の現象に援用し、概念意味論の3部門並列モデルにおける概念構造と空間構造とのインターフェースに関わる理論的含意を指摘した。すなわち、副詞的修飾におけるモノのサマ修飾は生態心理学的におけるアフォーダンスを基盤とすることによって成立している可能性があるというものである。 今後は口頭研究発表3.4.の速やかな論文化および公表に取り組むとともに、連用修飾という構文関係と意味範疇のねじれ、意味解釈の強制に関する現象記述とそれによる理論的含意の検討をさらに進めたい。
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Research Products
(4 results)