2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720120
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
村上 謙 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (20431728)
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Keywords | 日本語史 |
Research Abstract |
本年度は現代関西弁の代表的語法であるヘンの成立について考察し、新たな知見を得た。その成果を「明治期関西弁におけるヘンの成立について-成立要因を中心に再検討する-」(近代語研究16)として公刊した。これはこれまでの学界の水準を大きく超えるとともに、当該分野に新しい研究手法や研究視点を提供するものとして画期的なものとなるはずである。要旨を以下にまとめておく。 ○これまでヘンの成立過程については音変化説があるものの、成立要因に対する説明はなかった。 ○成立過程および成立要因としての音変化説には様々な問題があって認めがたい。 ○明治期、ヌ(ン)とナイの東西差意識やデアル文の多用によって、アル文否定時の非対称性が強調され、それを克服するためにヘンが成立した。 ○これで、上接語の偏り、成立時期、活用形の偏り、接続面のゆれ、などが説明できる。○具体的な成立過程は、オマヘン、マヘンからの異分析で説明できる。また、ハセヌからの音変化形ヤヘンの存在もそれを助長した可能性がある。 また、論文執筆と並行して、近世上方語資料における用例調査方法についての情報提供と、新たな検索方法の構築を、国立国語研究所主催の研究発表会で論じた。すなわち、「『手作業』による用例検索を専らとする一研究者が通時コーパスを使ってみる-動詞否定形式「~ハセヌ」類における上接動詞の通時的なあり方を例に-」(国立国語研究所「通時コーパスの設計」研究発表会)である。これについてやや詳しく述べると、本発表では、近世語研究分野における用例収集の現状や、発表者自身の用例検索方法、検索精度などについて報告するとともに、現在開発中の通時コーパスの長所を生かした活用例を考えた。具体的には、動詞否定形式「~ハセヌ」類における上接動詞の通時的なあり方を例に、用例検索時の簡便さについて述べた。さらに現時点における古典語通時コーパスの使用感などを報告した上で、今後の改善点などを提案した。
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