2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720122
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山東 功 Osaka Prefecture University, 21世紀科学研究機構, 准教授 (10326241)
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Keywords | 日本語学史 / 国学言語論 / 落合直文 / 小中村義象 / 学校国文法 / 松下大三郎 / 堀秀成 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、富士谷成章、本居宣長やその門流に代表される近世国学と、明治以降のチェンバレンや上田万年らに代表される西洋言語学との間を繋ぐ、明治前期(明治初年から20年代)の言語研究のあり方について、従来あまり指摘されることのなかった、堀秀成、落合直文、小中村義象といった明治期国学者の文法研究について、日本語学史的な精査と、その研究誌的意味についての検討を試みた。具体的には、それまで本格的な文法教科書などが存在していなかった段階において、過渡期特有の稚拙さを有しつつも、いわば「学校文法」(学校国文法)としての役割を果たしていたと評価できる、落合直文・小中村義象『中等教育日本文典全』(明治24年刊)の分析を通して、学校国文法成立史の観点から明治20年代の文法教育の特質について考察を行った。結果として、歌文の語格についての留意点や、活用形や助辞の使い分けなどといった記述から、まさに「規範文法」としてのあり方を体現した「学校国文法」そのものの姿が明らかになった。このことから、学校国文法とは、現今の「橋本文法」のように、ある学説に準拠した文法の一つとして固定的に考えるよりも、各時代における文法教育の内実を示した、いわば「現象」として把握されるべき観点の有効性が示された。また、落合らの文法書については、「新国文」運動とも称せられる(広義の)普通文普及運動の側面を持つこ可能性があることを指摘した。
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