Research Abstract |
本研究では,日本語話者が移住する地域で移住者が持ち込んだ方言が接触することで形成された接触方言(コイネ)の特性を,北海道とサハリンで形成された接触方言(それぞれ,北海道方言,樺太方言)を例に,考察する。本研究では,両接触方言が形成された時期から現在にいたるまでの間に生じた言語変容をめぐる異同を明らかにすることをめざす。具体的には(1)北海道方言・樺太方言が形成された時期の言語生活に関する記述から当時の両方言の社会言語学的状況を記述する視点,(2)現時点での北海道方言・樺太方言の特徴を,現地調査から捉える視点,を設ける。この二つの視点から,樺太方言・北海道方言の言語変容に見られる関係を整理するのが,本研究の目的である。今年度は3年計画の1年次目である。今年度に実施した調査は以下の通り。 I. 文献調査 北海道大学付属図書館,北海道立文書館,稚内市立図書館,根室市立図書館,一橋大学付属図書館,サハリン北海道人会事務所で(12月・2,月・3月)戦前・戦時中の言語生活,1940年代後半における言語生活に関する情報を収集した。 II. 面接調査 北海道根室市(11月),稚内市(10月)・サハリン州ユジノサハリンスク市,コルサコフ市(2月)で実施した。北海道根室市での調査は,自然談話の収集調査,稚内市での調査はこれに加えてアクセント調査を実施した。また,サハリンでの調査は,樺太方言の語彙調査,自然談話収集調査を実施した。なお,面接調査で実施した資料のデータベース化を図った。
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