2008 Fiscal Year Annual Research Report
主観化・間主観化および言語の解釈的用法から見た文法化の普遍性について
Project/Area Number |
20720131
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
米倉 陽子 Nara University of Education, 教育学部, 准教授 (20403313)
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Keywords | 主観化 / 間主観化 / 節と節の結合度 / 文法化 / 接続助詞 / 言いさし構文 |
Research Abstract |
本年の計画は, hypotaxis>subordinationという方向性仮説に反するように見える文法化をとりあげ, 人間特有のコミュニケーションのあり方という観点からの分析を試みることであった。その例として, 当初は理由を表す句である日本語「カラ」と英語becauseを扱う予定であったが, 先行研究等の兼ね合いから, 条件を表す接続助詞「バ」の文法化を分析の中心に据え, それに理由を表す接続助詞「カラ」を初め, 「ケド」「ケレド」の間主観化を絡める形で議論を進めた。「バ」を分析の焦点とした理由は, 「カラ」やbecauseと同じく, hypotaxis>subordinationというクラインに反するように見える文法化だからである。 通時的言語データを含む例文採取を行い分析した結果, 以下の事柄が分かった。 (1)もともと異なる主語を持つ節どうしを結び付けていた「バ」が, 共通の主語をもつ節どうしを連接するようになった点では, 節の結合度の強化が見られる。 (2)「バ」が連接する節間の意味的関係に目を向けると, 時間的連続読みから因果関係読みについては, 意味的結合度の強化が見られる。しかし, 恒常確定条件読みや対称読み, 並列読みになると, 節間の結合はむしろ弱まっているように見られる。 (3)(2)で述べた節間の結合度の弱化を, Ohori(1998)では「トピック性強化に由来する対比性の強化」と説明している。しかし, 本研究ではこの考えの妥当性に疑義を示し, 当該変化に関わっているのは主観化(subjectification)であることを主張した。 (4)さらに, 「バ」は後続節を伴わない用法を獲得し, 接続助詞として機能していないかのような構文を取るようになる。このような言いさし構文は, 「カラ」を初めとする接続助詞の発達にはよく見られる現象である。本研究では, この構文は間主観性の強化に関係していることを示した。(797字)
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Research Products
(1 results)