2009 Fiscal Year Annual Research Report
日英語の周辺的現象における形と意味のインターフェイスに関する研究
Project/Area Number |
20720132
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
今野 弘章 Takasaki University of Health and Welfare, 薬学部, 講師 (80433639)
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Keywords | 周辺的現象 / イ落ち構文 / 小節 / 私的表現 / 動機付け / 有標性 / 類像性 / 形と意味のインターフェイス |
Research Abstract |
平成21年度は,現代日本語におけるイ落ち構文についての研究を進めた。イ落ち構文とは,「ださっ。」や「気持ち悪っ。」のような,形容詞の終止形活用語尾「い」が脱落し,形容詞語幹に促音が直接付加された口語表現のことを指す。イ落ち構文の統語的・意味的特徴を分析した結果,当該構文が以下の特徴を持つことが明らかとなった。(i)イ落ち構文は,統語的には,C,T,Negの機能範疇を欠き,小節(small clause)が主節を形成する"root small clause"(Progovac(2006))の一種である。(ii)また,意味的には,イ落ち構文は,発話時における話者の感覚や判断を,「伝達」ではなく,「表出」する「私的表現行為」(Hirose(1995),廣瀬(1997))専用の構文である。(i)と(ii)の記述を踏まえ,本研究課題のテーマである「周辺的現象における形と意味のインターフェイス」の観点からイ落ち構文の統語的特徴と意味的特徴を照らし合わせた結果,当該構文において,「動機付け」・「有標性」・「類像性」の観点から,形と意味の問に一般的かっ規則的な対応関係があることが明らかとなった。 本研究課題が提案する「形式の有標性と機能の特化に関する一般化」の背後にある観点は,一見異常で不規則と思われる周辺的現象の背後に,実は正常で規則的な形と意味の対応関係が潜んでいる場合があるというものである。この点で,イ落ち構文は本研究の基本的立場を大いに支持する現象だといえる。 現在,今年度の研究成果を論文(今野弘章(2010)「イ落ち:形と意味のインターフェイスの観点から」未発表原稿,高崎健康福祉大学.)にまとめ,その論文に対し,知人の研究者にコメントを求めている段階である。今後はコメントを参考に原稿に手直しを加え,次年度早々に学会誌に論文を投稿予定である。
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Research Products
(1 results)