2008 Fiscal Year Annual Research Report
英語における方向を表す副詞的表現の共時的・通時的研究
Project/Area Number |
20720134
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Research Institution | Nagoya Sangyo University |
Principal Investigator |
石崎 保明 Nagoya Sangyo University, 環境情報ビジネス学部, 准教授 (30367859)
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Keywords | 方向を表す副詞 / forth / 文法化 / 語彙化 / 用法基盤(使用依拠)モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、主にOEDその他の電子化された(歴史的)言語資料に基づいて英語における方向を表す副詞の歴的発達を調査し、用法基盤モデルの観点から説明を試みることである。今年度は特にforthの歴史的発達とその理論上の位置付けに焦点を絞って研究を行った。まず、OEDその他の資料からforthの歴史的発達を調査した結果、forthは「方向」という語彙的意味から相的意味を獲得したというBrinton and Traugott(2005)における「文法化」の事例ではなく、Haspelmath(2004)における「撤回」の事例に相当することを示し、さらに、この「撤回」の事例は、「文法化」の事例と同様、使用頻度と生産性を言語変化の説明基盤とする用法基盤モデルにおいて適正に捉えることができることを示した。上記の研究成果については、第80回日本英文学会全国大会において口頭発表し、その内容を加筆・修正したものが近代英語協会学会誌『近代英語研究』第25号に掲載される予定である。以上のように、forthの歴史的発達については用法基盤モデルが説明理論として有効に機能するが、このモデルにおいても、言語使用における頻度の増減が何によって駆動されるのかに対する動機付けが弱いこと、および多様な意味変化や文法化に伴う変化の漸進性を捉えることが困難であること、の2点において問題があることを、日本英文学会中部支部学会誌『中部英文学』第28号に掲載された書評論文の中で指摘した。文法化理論と用法基盤モデルの理論的統合の可能性については、一部、Takikawa他編『IVY Never Sere』の中で、特に「語彙化」現象の扱いとの関連で指摘したが、今後はこの観察の妥当性を検証すること、およびforth以外の方向を表す副詞の発達について、当該の言語表現の頻度や生産性の増減に大きな影響を与える類義語との意味的・統語的競合の実態を明らかにすることが必要となる。
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