2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語における方向を表す副詞的表現の共時的・通時的研究
Project/Area Number |
20720134
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Research Institution | Nagoya Sangyo University |
Principal Investigator |
石崎 保明 Nagoya Sangyo University, 環境情報ビジネス学部, 准教授 (30367859)
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Keywords | 方向を表す副詞 / away / forth / out / 文法化 / 語彙化 / イディオム化 / 用法基盤モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、OEDその他の電子化された(歴史的)言語資料に基づいて英語における方向を表す副詞の歴史的発達過程を調査し、Brinton and Traugott(2005)(以下B&T)の文法化理論とLangacker(2000)やBybee(2007)らによる用法基盤モデル(以下UBM)と統合した理論的見地から説明を試みることである。前年度はforthの歴史的発達の考察に絞り、その発達が「文法化」ではなく「撤回」の事例であり、UBMにおいて説明可能であると結論付け、この内容が今年度発行された近代英語協会誌『近代英語研究』第25号に掲載された。本年度はさらに、awayとoutの歴史的発達に関する調査を行い、これらの副詞がその歴史的発達から文法化の事例とみなすことができるものの、outと比べてawayのタイプ頻度および生産性の漸進的増加がみられないことなどから、両者の文法化の進展に程度差があることを実証した。これら一連の研究の帰結として、英語の方向を表す副詞は、歴史的には語彙的意味から相的な意味を獲得した文法化の事例であるB&Tの主張は、本研究で調査したawayとoutに当てはまるものの、forthには当てはまらないことになる。この内容は国際ワークショップ(Current Trends in Grammaticalization Research、於オランダ)で口頭発表された。ところで、方向を表す副詞は特定の動詞と共起して句動詞を構成し、個々の構成素の総和から予測困難な意味を描写することも多い。このイディオム化という現象について、B&Tの枠組みでは、文法化に導かれたものと語彙化に導かれたものの2種類に分類可能であり、forthは前者の、awayとoutは後者の事例であることを実証した。この内容は、日本英文学会中部支部大会シンポジウムで口頭発表された。従来の研究では文法化理論におけるイディオム化現象の位置付けが明確でなく、本研究の妥当性を高めるためにはさらに詳細なデータを収集する必要があるが、これについては今後の課題としたい。
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