Research Abstract |
研究最終年度として,本研究課題のまとめと研究結果の発表(フィンランドでの国際学会,6月;小学校英語教育学会,7月,北海道;日本教育心理学会,8月,東京;JACET全国大会,9月,宮城)を行い,総括として研究成果報告書を作成した.結果の概略として,先行研究のトレースの結果,小学生の場合,学年が上がることに,英語学習に対する意欲(動機)は低下することがわかった.「一般的な事柄への興味関心の分極化」という発達的な説明で解釈できるのではないだろうか.低学年や中学年の児童とは異なり,高学年になるにつれ,興味関心が様々に分化し,英語以外への興味も持つようになることで,全般的な学習動機の変容に伴う英語学習意欲や動機の低下が考えられる.また動機変容に際して,男女差が見られる傾向があることである.これらは高学年における認知発達(cognitive development)による影響(例えば,自己中心性からの脱却や主観と客観の分化,抽象的な思考や,ソーシャル・スキルの獲得,自尊心,自己概念の形成など)と思春期に伴う心理的な変化を受けているようであり,こうした発達的変化についても考慮する必要があるかもしれない.小学校高学年児童(5,6年生)を対象に英語活動中における授業への好意度と不安を中心にその役割と関係性について調査結果,認知発達という心理的変化の過渡期にある児童の授業に対する好意度や不安は,クラス内における他者との関係や授業形態と授業内容などの要因により,変化しやすいことが分かった.一方で,比較的安定した児童個人内の特性によって不安や否定的評価に対する恐れなどが規定されることも分かった.児童一人ひとりのニーズに合わせた授業展開を行うことは困難と思われるが,個別支援という考え方も一つの選択肢として考慮する必要があるかも知れない.
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