2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者の「音読力」のメカニズムと「音読」指導の効果についての検討
Project/Area Number |
20720152
|
Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
清水 真紀 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (60433637)
|
Keywords | 英語学習 / 音読 / 第二言語習得論 / 教授法 |
Research Abstract |
本研究は、Baddeley(1986)に基づく音韻的作動記憶(phonological working memory, PWM)に焦点を当てながら、PWMと英語語彙知識、およびPWMと英語リスニング能力の関係を明らかにし、さらに日本人英語学習者の音読力のメカニズムを明らかにすることを目的としたものである。このPWMとは、母語の言語処理能力、獲得過程に限定されず第二言語の処理過程においても大きく関わることが多くの研究者により指摘されているところである。 平成22年度の調査では、大学生を対象に4つの課題-英語版PWM課題のCNRep (Gathercole&Baddeley, 1996;標準化テスト)、日本語版PWM課題(本研究で開発)、英語語彙イズテスト(望月,1998)、TOEIC Bridgeリスニングテスト(ETS, 2007)-を実施し、相関分析により以下の結果が得られた。 1.CNRepと英語語彙イズテスト、日本語版PWM課題と英語語彙知識テストの間には、それぞれr_<sp>=-.05(ns)、r_<sp>=-.11(ns)という値が得られ、つまり、PWMが学習者にとっての目標言語あるいは母語で測定された場合であってもPWMと語彙知識の間にいかなる関係が見られないことが分かった。このCNRepの結果に関しては、語彙知識がある学習者はかえってPWM課題で提示された無意味綴りの非単語も有意味化しようとして失敗した可能性を指摘することができる。 2.CNRepとTOEIC Bridgeの間にはr_<sp>=.50(p<.05)、日本版PWM課題とTOEIC Bridgeの間にはr_<sp>=.53(P<.05)と中程度の相関があることが示された。これより、学習者が非単語を作動記憶内でリハーサルし正確に復唱できる能力が、英語4技能の1つであるリスニングとも関連することが明らかになった。 今後は、本研究のように成人学習者のみならず、英語未学習の幼児や低学年児童をも対象にし、彼らのPWMが将来の英語能力の発達にどのように関わってくるかについて明らかにすることも重要な研究課題の1つである。
|