2010 Fiscal Year Annual Research Report
18?19世紀における奥羽両国の地域間交流と地域形成に関する社会史的研究
Project/Area Number |
20720165
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 大介 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (50374872)
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Keywords | 18~19世紀 / 奥羽地方 / 地域間交流 / 地域史 / 交通史 / 地域リーダー / 文化交流 / 歴史資料保全 |
Research Abstract |
平成22年度は、前年度までに引き続き、奥羽両国間の地域間交流を具体的に明らかにするための歴史資料所在および保全を実施した。また、研究最終年度の成果として、関連史料に基づく研究発表を行うとともに、明治維新前後における両国間を結ぶ新道開削の実態と歴史的意義について明らかにした。 史料調査については、最上海道に関連する史料として、加美町所蔵の米谷家文書の保全活動を行った。同家文書は中新田町史編さん事業の際に一部が利用されたが、全体の9割ほどが未整理のままであった。これらの史料について全点の撮影と整理を行った結果、総数が6000点と判明した。その史料を分析した結果、近世の中新田地方を中心とする書物の奥羽両国間での流通状況の一端を明らかにすることが出来た。また、前年までに収集した史料分析から、上記の最上海道沿線地域である加美郡小野田本郷(加美町)において、地域復興に尽くした名望家の存在を発掘し、研究発表を行うことができた。四書五経の理念に基づき、羽州からの移民や備荒貯蓄政策、救済基金を創設したが、19世紀初頭に関東などで見られる農村復興策の先駆的な動向をなす事を明らかにした。 研究成果としては、明治初年における奥羽両国間の新道開削事業の実態について明らかにする研究論文を発表した。この点について、従来の研究では明治政府や山形県令三島通庸による政府主導の事業と位置づけられていた。これに対し、代表者は本課題での新たな史料発掘と分析に基づき、幕末期から地域名望家を中心とする地域住民主導の太平洋海運と内陸交通の事業の存在を明らかにすることができた。さらに、これらの事業こそが、明治政府による交通再編政策の歴史的前提となったことを解明し、当該期の奥羽両国の歴史像を転換する地域の主体性を提示することができた。
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Research Products
(6 results)