2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720172
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
吉田 賢司 Teikyo University, 文学部, 講師 (60459386)
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Keywords | 室町幕府 / 室町殿 / 管領 / 大名 / 守護 / 幕府直属国人 / 軍事制度 / 室町時代 |
Research Abstract |
室町幕府軍制を総体的に理解するためには、諸勢力で構成される連合軍の複線的な指揮系統を前提として認めつつ、その調和がいかに図られたのかを検討することが重要となる。しかしながら、これまで遂行してきた研究で指摘した守護と幕府直属国人とに系列化した軍事編制が、戦時で実際に反映されたのかどうかについては、不明瞭な点も残していた。こうした課題を解決するため、多国間の守護と直属国人とを基軸に編制された幕府軍の前線における連合形態について分析した。まず、前線において守護(代)と直属国人とは、談合・書状のやりとりを頻繁に行い連携しつつも、別経路で軍役を収取し個別の軍勢を指揮した点を論じた。また、在京大名機構は所属守護勢からの注進窓口となり、内衆→大名→室町殿といった連絡ルートも確認できた。幕府上使や守護(代)をはじめとした多国間の諸将により構成される「諸陣」(連合軍中枢)でも、戦略・戦術の意思統一が図られ、その方針が各自の指揮系統に沿って麾下の軍隊や守護機構に達せられた点を解明した。この「諸陣」の総意に基づく協定は、非制度的ながら個別守護の政策をも規制した。その一方で、前線で対処できない事柄は、幕府首脳に判断が仰がれた。これを受けた幕府では、室町殿が管領・諸大名の意見を聴取して方針を定めた。上意による軍事政策は、京都の幕府と前線の「諸陣」とが連携する形で遂行された。だが連合軍の派遣は地域社会に重い負担を課し、幕府が進めた訴訟制度改革の桎梏ともなっていた点を明らかにした。さらに、佐藤進一氏の「将軍権力の二元性」論(『日本中世集』岩波書店、1990年)を起点に、室町幕府軍制の研究軌跡をたどり、領域支配と戦時編制をめぐる評価の変遷と問題点を確認した。その成果は、2009年7月25日に開催された鎌倉遺文研究会第153回例会で口頭発表した。
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