2010 Fiscal Year Annual Research Report
オスマン帝国改革期における中央-地方の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
20720184
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
秋葉 淳 千葉大学, 文学部, 准教授 (00375601)
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Keywords | 東洋史 / 西アジア史 / オスマン帝国 / 地方行政 / 近代化 / トルコ |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究成果のまとめと公表を中心に行ったほか、現地トルコで史資料の補完的な収集を行った。 まず、7月にバルセロナで開催された第3回中東研究世界会議に、トルコ、フランス及び日本の研究者とともに、「地方化されるオスマン改革」と題するパネルを組織して参加した。そのパネルでは、オスマン帝国の「タンズィマート」改革を地方社会との相互関係の視点から再検討する4本の研究発表がなされた。本研究代表者は、帝国の周縁部に位置する黒海東部沿岸地域の住民の、国家制度改革に対する主体的対応に関する研究成果を報告した。それにより、同地域の比較的低い階層出身者が、改革期以降、シャリーア法廷裁判官及び税関官吏などとしてオスマン官僚機構の中に進出したこと、並びにその歴史的・社会的背景を明らかにした。 アナトリア南部のアランヤ近郊のイブラドゥに関するケーススタディに関しては、この町の歴史を18世紀に遡ってその中央との関係ならびに地方社会内部での対立関係を跡づけたほか、タンズィマート改革期における「郡長」職をめぐる問題などを検討した。これについてはトルコでのシンポジウム及び、九州史学会で報告を行った。 また、1841-42年におけるタンズィマート初期改革の修正については、初年度に行った研究報告に新たな資料の分析を盛り込むことでそれを発展させ、論文として成果を公表した。その論文では、この時期の政府の政策決定において、地方官の意見の聴取など慎重なプロセスがとられたこと、最終的には財政的な危機と地方有力者の懐柔が優先されたことを指摘し、従来の研究に新たな知見を加えた。
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