2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720185
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 岳 Kyoto University, 人文科学研究所, 助教 (60378883)
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Keywords | 中国 / ヴェトナム / 歴史 / 明清 / 華南 / 東アジア / 東南アジア / 国際関係 |
Research Abstract |
この研究の目的は、華南中国とヴェトナムを一体の地域と捉え、両国の境界地域に生活する人々の国境を越えた往来の具体相を明らかにすることである。21年度は前年度に続いて16世紀の広東・海南・ヴェトナム周辺の海域を対象に、陸域も視野に入れながら、主に中国側の地方志・文集・筆記等を中心に史料の収集と読解を進めてきた。特に広東省の政書類および文人の見聞記等から、明代の広東海上において、華南の華人とヴェトナムとの間で、密貿易や真珠の採取等を通じた接触が確認できた。また、実録・地方志等の記述からも中国国内の反乱などに際して中国からヴェトナムの領域へと逃亡する事例を相当数見いだすことができた。また、広東・広西の陸境でも、村単位でヴェトナムと中国との間で争奪される地域について、地方志等に比較的詳しい記述があることがわかった。広西の土司についても、ヴェトナムとの通交を伺わせる行動が関連する史料上に散見され、実録や政書類に加えて族譜を参考にすることで、土司から見た大越王権の存在感を窺い知ることもできた。また、16世紀の莫氏政権のおかれた特殊な時代状況を理解するためには、明朝による永楽年間のヴェトナム占領と、黎朝独立の経緯に対する一定の理解が不可欠である。明の各種記録とヴェトナム側の大越史記全書等を比較していく中で、政府間関係や士大夫の言説という、(政治的な意味で)より上層においてもこれまでそれほど注目を集めていない、中国の対越関係の特異性を見いだすことができる。さらに、ポルトガル人のヴェトナムを含む東アジアにおける活動に関する史料・研究書の収集と読解を一定程度進めてきており、17世紀の南シナ海域の多国籍的状況を把握する目途がたちつつある。
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