2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720186
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
石川 亮太 Saga University, 経済学部, 准教授 (00363416)
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Keywords | 華商 / 19世紀 / 朝鮮 / 開港 / 人参 / 同順泰 / アジア域内交易 / 取引制度 |
Research Abstract |
19世紀末の朝鮮華商の国内商業について、華商自身の経営構造と取引内容に即して分析するという本研究の目的のもと、平成21年度には同20年度に引き続いてソウル大学校所蔵「同順泰史料」の分析に取り組んだ。特に注目したのは、1880年代末に同順泰が関与した朝鮮人参の輸出事業である。朝鮮人参(輸出用に加工された紅蓼)は19世紀初頭から中国向けの重要な輸出品となり、その輸出権は王権/政府の厳格な管理の下で配分された。開港後の1880年代にはその輸出権の多くを国王が掌握することになり、開化事業の財源等に充当された。本報告者が「同順泰史料」や関連史料を分析したところ、これら国王に輸出権の帰属する人参の多くが、開港前から対中国貿易のノウハウを蓄積してきた通訳官等を通じて華商の手に渡っていたことが明らかとなった。 従来の研究によれば、開港後の朝鮮華商の活動は、開港以前から行われていた朝貢使節に付随する形での対中国貿易とは断絶した、新しい現象であると(暗黙のうちに)看做されていた。しかしながら以上のような本報告者の分析は、華商らが在来の対中国貿易にまつわる商業特権や経験と結託しながら朝鮮市場に進出したことを示しており、朝鮮華僑史のみならず朝鮮の開港と国際市場への包摂過程を考える上で重要な論点を提起している。 また平成21年7月には韓国京畿道の沿海部の実地調査を行った。京畿道北部の都市開城は朝鮮後期において朝鮮人参の集散地として栄え、同順泰をはじめとする開港後の華商も人参購入の拠点とした。上の実地調査では、仁川から開城に至る海路等の状況を実見し、また華商に関する口碑資料についても収集を試みた。
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