2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦国文字と記録媒体に関する基礎的研究―戦国史像の再構築―
Project/Area Number |
20720188
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
下田 誠 学習院大学, 文学部, 助教 (40448949)
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Keywords | 戦国文字 / 記録媒体 / 中国史 / 資料学 / 国際研究者交流 / 中国・台湾 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は戦国文字と記録媒体の基礎的研究・分析を通じて、戦国史像の再構築を目指すものである。平成22年度は本研究課題の3年目にあたる。本年度は当該研究課題に直接かかわる2篇の論文を発表することができた。 本年度は第一に燕斉兵器研究を課題としており、その資料収集と考証研究を進めた。ただし、燕斉兵器についてはすでに多くの研究が発表されているため、自分の着眼点を前面に押し出すよう工夫した。具体的には東アジア世界の中に青銅兵器研究を位置づけなおし、新たな領域の開拓を試みた。論文では遼寧式銅剣を手がかりに、日本武器形青銅器と朝鮮半島の青銅器、戦国燕そして三晋の青銅兵器を結び、双方向の交流を描き、また相互の社会の在り方に言及した。第二に前年度より鮮明に示してきた戦国出土文字資料の「史料化」という方法を展開する論文を3月に発表した。これは字形の型式分類をおこなう古文字学的研究であり、「史料化」作業の一端を示したものである。 一つ特筆に値することは、年度当初の予定とは別に2年程度交渉・準備を続けてきた河南博物院の倉庫内青銅兵器の調査が実現した。同館は1970年代に出土した鄭韓故城出土青銅兵器を所蔵しており、内外から注目されている。同資料群は青銅兵器研究において、考古学的発見であることや器例が多いことなどから一級の資料とされている。しかし、まもなく出土後40年になるとはいえ、いまだ初期の簡報で紹介された30件程度以外、非公開である。その資料群を中国社会科学院歴史研究所と河南省文物考古研究所の支持を得て、中国社会科学院歴史研究所の若手研究者と共同で調査を実施した。当日は模本の作成をおこなった。この経験は目を鍛えるという意味からも有意義であった。 なお、当初本年度は山東省博物館と河北省博物館の訪問を予定していたが、これは改修中や協力者の異動など諸般の事情により見送った。その予定経費は上述の河南博物院所蔵資料調査に充当した。
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