2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦国文字と記録媒体に関する基礎的研究-戦国史像の再構築-
Project/Area Number |
20720188
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
下田 誠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40448949)
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Keywords | 戦国文字 / 記録媒体 / 中国史 / 資料学 / 国際研究者交流 / 中国・台湾 / 国際情報交換 / 中国・台湾 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度は呉越・楚系青銅兵器の資料整理を進めた。これまでの三晋兵器研究の経験をいかし、金文著録を利用して史料の全体状況の把握に努めた。ただし、これは論考としてまとめる段階には至らず、継続して取り組む課題とした。年末に実施した調査(12月25日~31日)では呉越兵器・楚系青銅兵器を収蔵する湖北省博物館や上海博物館を訪問した。調査の副産物は湖北省博物館所蔵三晋兵器に関する研究で、同館副館長のご助力により「二十五年陽春戈」と「卅四年頓丘令戈」の所在を確認していただいた。同器は近年、通説と異なる編年案が出されているが、筆者は墓葬年代や器形の特徴から通説を改める必要はないと考えている。残念なことに両器は同館の倉庫では見つからなかった。しかし筆者はそれほど悲観してはいない。別に進めている河南博物院所蔵鄭韓故城出土青銅兵器の調査においても資料の移管が認められた。公表されている所蔵館に存在しない理由は様々のようだが、いずれにせよ現蔵調査は新たな研究テーマになると期待している。 さて、年度後半は官制に対する関心から1995年に発見された西安北郊相家巷秦封泥の研究に没頭した。官制は三晋青銅器銘文の「史料化」においても注目していたが、断片的な記載から全体をうかがうのは困難であった。秦封泥は6000枚を超える資料が存在するとみられ、すでに2000枚以上の資料が公開されている。とりわけ官制と地名についての情報が豊富である。新しい資料を加えて筆者の視点から「封泥よりみた秦代の中央官制-その資料学的研究-」と題する論文をまとめた。12月の調査時には北京の古陶文明博物館も訪問し、常設の秦封泥を詳しく調査した。 ほかに前年度、長江・三峡古文化学術研討会曁中国先秦史学会第9届年会(2010年6月14日)において発表した「盧氏令戈考」が2011年6月に刊行された論文集に収録された。 最後に4年間の研究成果として最終報告書をまとめることにした。
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