2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世アキテーヌ公領統治における空間とコミュニケイションの諸相
Project/Area Number |
20720196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 玄 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (00431883)
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Keywords | 中世史 / フランス / イギリス |
Research Abstract |
研究初年度である平成20年度は研究遂行に必要な道具類や文献を購入するとともに、イングランド国王エドワード1世によるアキテーヌ公領の巡幸(1286-89年)に焦点を当てた検討を行った。主に用いた史料は『納戸部会計簿』、『アキテーヌ封建義務確認文書集』および『ガスコーニュ関連文書集』である。その結果、以下の点を明らかにすることができた。 まず、会計記録や証書発給地をもとに巡幸ルートを確定することで、エドワード1世がアキテーヌ公領の各地を網羅的に訪れていることを確認した。また、発給された証書の分析から、エドワード一行が各地を訪問した際に、バスティドと呼ばれる新設集落を建設、あるいは既存の諸都市やバスティドに特権を与えたこと、さらに教会組織や都市住民からの請願に対処し、彼らに贈与や施しを行っていることが判明した。加えて、移動する宮廷の構成員と娯楽の場としての性格を指摘した。以上の概略は、加藤玄「エドワード一世のアキテーヌ巡幸」『創文』513(2008年10月)として発表済みである。 他方、エドワードと被統治者相互のコミュニケイションの分析は現時点では限定的なものにとどまり、エドワードの公領滞在中に彼の宮内府に騎士として仕えたガスコーニュ出身貴族の実態解明が今後の課題となった。そのため、10/4〜7日にフランスのボルドーに滞在し、ジロンド県文書館で手稿史料の調査収集を行った。 なお、上記と平行して、都市アルルを対象に「測量術書」を史料として用いた分析を行い、本研究に関わる空間論的視点の理論的見通しを得ることができた。
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