2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世アキテーヌ公領統治における空間とコミュニケイションの諸相
Project/Area Number |
20720196
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
加藤 玄 Japan Women's University, 文学部, 准教授 (00431883)
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Keywords | フランス / イングランド / 中世 / 都市 / 宮廷 |
Research Abstract |
平成21年度は研究遂行に必要な文献類を購入するとともに、昨年度に引き続き、当該テーマの考察を深め、以下の三点について、研究成果の公表を行った。 第一に、エドワード一世の大陸所領巡幸の性格である。王が発給した証書類に加え、彼に付き従っていた納戸部が残した会計記録簿を分析し、家中騎士層に焦点を当てつつ、移動宮廷の具体像を検討した。巡幸ルートの分析からは、王は都市やバスティードには頻繁に立ち寄っていたものの、有力封臣の所領にはごく短期間の滞在が確認できるのみであった。一方、移動宮廷の構成員の分析から、巡幸中の王とのコミュニケイションを積極的に維持していたのは家中騎士となった地元の中小貴族であることが判明した。移動宮廷に騎士として仕えた地元貴族は、俸給と官職を与えられ、特にセネシャル代理以下の下級役人に登用され、統治の一翼を担った。以上の知見を史学会大会(11月8日)にて報告した(『史学雑誌』119-1、2010年、118頁に要旨掲載)。さらに、エドワード一世と妃エリナーの宮廷の主に文化的な役割に関して、日本女子大学史学研究会大会(12月5日)で招待講演を行った(『史艸』51、2010年に要旨掲載予定)。 第二に、大陸所領巡幸中の国王一行が好んだ滞在先の一つである新設都市群に関しては、伊藤毅編『バスティード』(中央公論美術出版社)中の第1章「バスティードの歴史的背景」で、その建設の政治的・経済的・宗教的背景を明らかにした。 第三に、挿絵入りの測量術書から中世末期のアルルの都市生活における測量士の役割を考察し、都市民による市壁外空間への統制の強化を論じ、高橋慎一朗/千葉敏之編『中世の都市』(東京大学出版会)中の第3章「都市を測る」として発表した。
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Research Products
(6 results)