2009 Fiscal Year Annual Research Report
大戦間期におけるグローバルな環境危機論の形成とイギリス帝国
Project/Area Number |
20720202
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
水野 祥子 Kyushu Sangyo University, 経済学部, 准教授 (40372601)
|
Keywords | 土壌浸食 / イギリス帝国 / 大戦間期 / グローバル / 環境危機 / 植民地諮問協議会 |
Research Abstract |
本研究ではイギリス帝国内の科学者/官僚に焦点を当て、かれらが大戦間期に唱えた土壌浸食問題を基盤とするグローバルな環境危機論が本国の科学ソサエティや本国・植民地の政府や行政に与えた影響を検証した。まず、本国で最も権威のある科学協会の一つイギリス科学振興協会の年次報告書を分析し、1920年代までほとんど取り上げられてこなかった土壌浸食が30年代になると急に関心を集めるようになり、帝国内の土壌資源の調査が進められたことを明らかにした。 さらに、植民地省が代表的な科学者を集め、各植民地の農業開発のための包括的な政策を打ち出すことを目的に設立した農業と家畜衛生に関する植民地諮問協議会においても、1930年代半ば以降、優先課題が輸出用農産物の生産拡大から土壌浸食問題の抑止へと変化した。協議会のメンバーは土壌浸食問題を、過放牧、乾燥化、飢饉、原住民の人口増加や栄養失調など植民地の複合的な諸問題の一部として認識しており、包括的な土地政策の一環として土壌保全を確立するために、各植民地の農務局や森林局、土木事業局などの関連当局が緊密に協力すべきだと訴えた。当局の側も、かれらの提言を実行に移す必要性を認識していた。また、かれらの提言を受けて、植民地省内には帝国規模で土壌浸食の被害状況に関する情報を収集するシステムがつくられた。歴代の植民地相が植民地政府に対し繰り返し土壌浸食問題について注意を喚起したこともあり、帝国規模での土壌保全対策が促進されたといえよう。
|
Research Products
(1 results)