2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 佑介 Kyoto University, 人文科学研究所, 助教 (50452298)
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Keywords | 北魏 / 鮮卑 / 平城 / 墓制 |
Research Abstract |
平成21年度は、前年度にひきつづき、北魏を建国した拓跋鮮卑の文化を考古学的に解明することを目的として、資料の集成と分析をおこなった。北魏前期の都であった平城(山西省大同市)一帯の北魏墓については、発掘データの集成と分析を完了し、その成果を学術論文にまとめた(「北魏平城時代における墓制の変容」『東方学報』85、2010年)。そこでは、年代の基準となる土器編年を検証し、それを基礎として、平城の時代に北魏の墓制がいかに変化したのかを解明した。それにより、北魏前期の墓制には鮮卑が中国文化を受容していく過程があらわれており、とりわけ5世紀後葉にいたって墓の構造や副葬品に大きな変化がみられること、それは墓に対する観念そのものの変化を意味していることを明らかにした。また、こうした北魏墓制の変容を、都城の変化とあわせて考察することにより、鮮卑の漢化という現象がいかなる歴史的意義をもつものであったのかを明らかにした(「北魏の考古資料と鮮卑の漢化」『東洋史研究』68-3、2009年)。考古資料と文献史料とを総合した研究によって、これまで漠然と議論されてきた鮮卑の漢化という現象の実態を究明し、とりわけ5世紀後葉の太和年間にみられた都城や陵墓制度の変革が、孝文帝の理想とした皇帝を頂点とする中央集権的な国家体制を反映したものであることを指摘した。このように、鮮卑の漢化とよばれる現象を、単なる文化史上の出来事としてとらえるのではなく、北魏王朝の性格や後世への影響とあわせて論じたことは、従来の研究にはない大きな成果であった。
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Research Products
(2 results)