2008 Fiscal Year Annual Research Report
製作技術から捉えた北部九州産小型青銅器の生産と展開に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20720208
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田尻 義了 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 研究員 (50457420)
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Keywords | 考古学 / 弥生時代 / 青銅器 / 鋳造 / データベース |
Research Abstract |
本研究の目的は、弥生時代における北部九州産小型青銅器の生産と展開に関する考察を研究課題とし、その研究を行うための製作技術から捉えた基礎的資料の集成と資料化を目的とする。なぜなら、これまでの研究は、青銅器の中でも主に大型の武器形青銅器や銅鐸などの製品を対象として進められており、数多く出土する小型青銅器についてはほとんど注目されてこなかったからである。その背景として、これまでの青銅器を用いた研究目的が当時の社会背景を読み解くことであったため、共同体祭祀に使用されたと位置付けられる大型製品に研究対象が偏ってしまったのではないかと考える。しかし、小型青銅器は青銅器文化の一角を占める重要な遺物であり、また大型青銅器と当時の扱われ方が異なることこそが弥生社会の特質の理解に繋がると考える。また、製作技術からの視点という点を加えたのは、これまでの研究動向が主に形態的特徴に重点が置かれていたためである。各資料の分類や編年作業を行うにあたっては、形態的特徴に注目するのは有効な手段である。しかし、本研究ではさらに各製品を横断する製作技術に関する検討を視野に入れた集成研究を行うこととした。 上記の目的を達成するため、平成20年度は対象資料のデータベース作成を実施し、小形〓製鏡・青銅製鋤先・巴形銅器・銅釧を対象として約60%の作業を終了した。また、国内資料調査を5回実施し、対象資料の実見・実測・写真撮影を行った。 本年度の研究実績としては、九州大学筑紫地区出土巴形銅器鋳型(九州大学埋蔵文化財調査室所蔵)と香川県森広天神遺跡出土巴形銅器(東京国立博物館所蔵)3点が一致したことが挙げられる。本研究課題である北部九州産小型青銅器の生産と展開を示す極めて重要な発見である。また、この一致という成果から、新たに巴形銅器の製作方法を解明する研究も進行し始めている。
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