2008 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品の用材分析に基づく中・近世森林資源利用史の研究
Project/Area Number |
20720210
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 伸哉 Waseda University, 人間科学学術院, 助手 (60434338)
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Keywords | 江戸 / 鎌倉 / 木製品 / 樹種 / 年輪 / 木材利用 |
Research Abstract |
中・近世の関東における都市住民と森林資源との交渉の歴史を、遺跡出土木製品・木材の用材から明らかにすることを目的とし、東京都内および鎌倉市内の複数の遺跡から出土した木製品・木材の樹種同定・年輪幅の計測および考古学的分析をおこない、木材利用の身分・階層による差異や時期的変遷の一端を明らかにした。これらの成果を学位論文および学術論文にまとめ、また発掘調査報告書などの刊行物および学会発表によって公表した。 東京都中央区日本橋一丁目遺跡から出土した江戸時代初期から近代に至る遺構構築材の樹種を同定し、江戸の町屋における土木・建築用材の変遷と、そこから類推される木材利用の様相を検討した。土蔵跡、穴蔵、下水木樋・枝樋、井戸の部材1934点の樹種同定をおこなった。その用材には江戸時代初期から幕末・近代にかけて変遷が認められた。こうした変遷の背景には、都市人口の増加と、明暦の大火(1657年)をはじめとする火災の影響が推定された。 近世江戸における木材利用について一応の総括をおこない、これを博士学位論文にまとめた。それと同時に、大名屋敷(干代田区溜池遺跡)から出土した木製品・建築材の樹種同定に着手した。また中世鎌倉の資料の調査を開始し、町屋跡である御成04遺跡・若宮大路周辺遺跡群出土木製品を中心に樹種同定をおこない、その成果を学会発表によって公表した。 年輪幅については、東北大学植物園と共同で、東京都千代田区弥勒寺跡から出土した、江戸初期から1682年に形成された木棺材の樹種同定と年輪幅の計測をおこなった。クロスデーティングの結果、771年間の年輪幅クロノロジーを構築した。このクロノロジーは9世紀から17世紀にかけての年代に位置すると推定され、今後の暦年代決定により、同地域における年輪考古学研究に資することが期待される。この成果を学会発表によって公表した。
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