2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720212
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
東村 純子 Kyoto University of Art and Design, 芸術学部, 非常勤講師 (10465601)
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Keywords | 紡織 / 弥生・古墳時代 / 原始機 / 良渚文化 / 東アジア / 地機 / 郡衙 / 律令国家 |
Research Abstract |
日本列島において、国家規模での貢納を前提とした紡織体制はどのような過程で成立したのか。本研究では、布を織る機織具について、弥生・古墳時代から律令時代までの出土部材を抽出し、分析対象とした。第一に、弥生時代から古墳時代後期まで用いられた原始機(構造部材のない腰機)の技術形態について、台湾原住民をはじめとする民族例との比較検討を行った。その結果、経を手前から奥へ輪状にかけ、足と腰でその弛張を調整する形態であることを明らかにした。当然、織り上がる布幅は、織手の腰幅が、布長は織手の足の長さに規制される。この輪状式原始機の特徴を東アジアにおける紡織技術史の流れのなかで位置づけると、中国大陸の新石器時代後期の良渚文化、前漢併行期の石寨山文化にその存在が認められ、東アジアにおいて原初的な技術形態であったと評価できる。 第二に、地機(構造部材のある腰機)を構成する出土部材を抽出し、所属時期やその技術形態について検討した。その結果、6世紀前半から7世紀前半には渡来系集落や在地豪族の拠点において、7世紀後半から8世紀には各地の郡衙工房で地機を用いたことが読み取れる。 織手の身体によって布幅や布長が規制される輪状式原始機に対して、地機は経を直状にかけるため、長い布が織れる。調庸制の原形ともいわれる「大化改新詔」第4条を援用すれば、律令国家を目指した中央政権は、従来の原始機の織成技術を労働そのものとして把握する一方、より専門性の高い地機の織成技術を求めたのであろう。
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Research Products
(4 results)