2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東村 純子 Kyoto University, 総合博物館, 教務補佐員 (10465601)
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Keywords | 紡織 / 紡錘車 / 原始機 / 地機 / 考古学 / 弥生時代 / 古墳時代 / アジア |
Research Abstract |
日本列島において、国家規模での貢納を前提とした紡織体制はどのような過程で成立したのか。 本研究では、布を織る機織具について、弥生・古墳時代から律令時代までの出土部材を抽出し、分析対象とした。第一に、弥生時代から古墳時代後期まで用いられた原始機(構造部材のない腰機)と古墳時代後期以降に用いられた地機(構造部材のある腰機)を構成する出土部材を抽出し、その技術形態について比較検討した。整経技術の観点から、織布の長さが織手の身体に規制される輪状式原始機と、規制されない地機とはまったく異なる技術系譜上にあるという結論にいたった。 第二に、韓国における出土紡織具と日本の出土例との比較から、遅くとも古墳時代後期に出現する地機・高機が、朝鮮半島経由のものであったと予察できた。このことは渡来系集落の存在が推定できる遺跡から糸枠が出土する事実からも裏付けられる。糸枠は地機や高機で長い布を織るための整経作業に用いられた。また、古墳時代後期に新たに出現する鉄製紡錘車も渡来系遺物の可能性があり、滑石製紡錘車にも新たに鉄製の軸を装着するものが現れたことも確認できた。このように一連の紡織技術の革新がおこる古墳時代後期から律令国家形成期における紡織活動の具体相について、阿波国造の本拠地と推定される徳島県観音寺遺跡出土をはじめとする各地域の紡織具の組成分析から考察した。 近年、ベトナムなど東南アジアにおいても木製紡織具が出土しており、紡織技術の考古学的研究が進みつつある。本研究の成果は、中国とその周辺地域を包括したアジア地域の紡織技術史の解明においても重要な役割を果たすだろう。
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Research Products
(5 results)