2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720218
|
Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
志賀 智史 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課・保存修復室, 主任研究員 (90416561)
|
Keywords | 埴輪 / 赤色顔料 / ベンガラ / 朱 / 顕微鏡観察 / 蛍光X線分析 |
Research Abstract |
埴輪に認められる赤色顔料について、顕微鏡やX線分析装置を用い粒子の形態分類や鉱物組成による分類を行い、編年や地域性を検討することを目的として実施した。 今年度は東日本を中心に調査をおこなった。古墳時代以前の出土赤色顔料には辰砂(HgS)を磨り潰した「朱」と酸化鉄(Fe203)に発色の要因がある「ベンガラ」の二種類が知られている。埴輪に認められる赤色顔料は、生物顕微鏡観察と蛍光X線分析により、全てベンガラと判断した。ベンガラからは全て赤鉄鉱を検出した。出土ベンガラは直径1μmのパイプ状粒子を含むもの(以下、ベンガラ(P))と、これを含まないもの(以下、ベンガラ(非P))に大別されるが、甲信越地域ではベンガラ(P)を用いること、東海地方と南東北地方ではベンガラ(非P)を用いることがそれぞれ判明した。埴輪の種類が異なっていても同じ種類のベンガラが使用されていた。編年については明らかな差は現段階では認められなかった。 3ヶ年の調査結果として、埴輪に用いられたベンガラにも地域性があることが判明した。この地域性は墳墓主体部で使用されたベンガラの種類と概ね一致するが、異なる地域も認められた。今後はさらに細かな地域性や時期的な使い分けの有無について調査を続けたい。またこの地域性が何を意味するかについても検討したい。 これまで蛍光X分析による朱かベンガラかの推定が赤色顔料研究の主体であったが、他の考古資料と同じように形態分類から地域性を導き出すことができた。今後も同様な視点に立ち、他の用途に使われた出土赤色顔料についても研究を進める必要性が生じてきた。
|