2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720219
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30325138)
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Keywords | 河川災害 / マレーシア / 河岸侵食 / 洪水 / 伝統的河川工法 / 技術移転 / 多自然川づくり / 国際協力 |
Research Abstract |
本年度は、主として、国内での資料収集を中心に研究を進めた。 具体的には、まず、京都大学東南アジア研究所に所蔵されているマイクロフィルムを利用して、マレーシア・サラワク州における災害記録を渉猟するという作業を行った。それによって、植民地期においても多種多様な現象が災害として記録されており、河川災害(特に洪水)それらの一部として取りわれていることが分かった。今後はこうした記録を定量的に把握する方法を考案する。また、河岸侵食という現象については、過去(1870~1970年)にはほとんど記載がないことから、これが20世紀後半以降の新しい災害として表れてきたことが推察できた。これは、現地住民の言説とも一致するところであるが、その審議については、21年度に行った地形学的な調査の結果とも照らし合わせる必要があると思われる。 次に、河岸侵食の防止策について、引き続き検討を加えた。具体的には、日本の伝統工法に詳しい新潟県のコンサルタントの技術者と、ラオスへの技術移転の経験を持つ仙台のコンサルタントの技術者らを中心に情報交換を行い、伝統工法の技術移転の可能性について検討した。ラオスへの技術移転に関しては、JICAやその他機関・個人のインタラクティブな関係が明らかになると同時に新たな継続プロジェクトが動きつつあることも判明した。一方、マレーシアへの移転を考える場合、少なくとも10年以上のスパンを持つプロジェクトを想定しなければならないという結論を得た。本研究の期間内にそれらが実施される可能性は低くなったが、異なるアクターがひとつのプロジェクトにどのように関わっているのか、一定の構図が明らかになりつつあり、当初予定していたアクター・ネットワーク論のケースとして、ラオスおよびマレーシアの事例の観察を続ける意義は見いだせた。 また、本年度は研究協力者(柚洞一央氏)との打合わせを通じて、論文の執筆にも取り掛かった。
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