2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720219
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30325138)
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Keywords | 河川災害 / マレーシア / 河岸侵食 / 洪水 / 伝統的河川工法 / 技術移転 / 多自然川づくり / 国際協力 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの研究の進捗状況を鑑み、補足的な調査を行うと同時に、次なる展開に向けた活動を行った。具体的には、まず昨年度に引き続き、京都大学東南アジア研究所所蔵のマイクロフィルムを利用して災害記録の検索を継続したほか、過去50年間の雨量データを取得し経年的・定量的な把握を行うことを試みた。その結果、ラジャン川流域においては、近年、気候変動が激しく、雨量が極端に増加しているという住民の言説とは異なり、過去数十年、目立った雨量変動は認めらなかった。こうした数値的なデータと住民言説とのズレは、ボルネオにおいては、気候だけでなく、生態環境や地形変動についてもしばしば認められるものであり、人々の自然認識のあり方を考察する具体的材料として興味深い。 一方、平成21年度に行った地形学的調査と住民への聞き取り調査についても追加の現地調査を行った。その結果、前回は見いだせなかった別の地形変動要因の可能性があることが分かった。具体的には、.ラジャン川の河床構成・断面については支流の影響が大きいこと、河岸侵食の進行には土砂供給の減少が寄与している可能性が高いこと、近年の流量変化については上流でのダム建設が関わっていることなどが明らかになりつつある。これらのデータについては現在分析中で、平成24年度中に学会発表と投稿を予定している。また、観察と聞き取りから集落の立地を類型化し、河岸集落の脆弱性について、地形的な特御と歴史的・社会的背景との関係性についての議論の材料を得た。 このほか、国内では、新潟、大阪、仙台の河川技術者らと日本伝統工法について討議し、その一部は雑誌投稿した(審査中)。また、これら伝統技術のマレーシア移転についても検討し、国土交通省の海外プロジェクト案件発掘照会に対して、ラジャン川を候補箇所として選定し、共同で申請を行った。これについては、現在、国建協において審査中である。
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