Research Abstract |
本研究の目的は, 団塊世代の大量退職に伴うオフィスビルの供給過剰問題(オフィスの2010年問題)に着目して, 東京大都市圏におけるオフィス立地の再編メカニズムをオフィスのフィルタリングプロセスから解明することである. 本年度は, 既存資料や統計を用いて, 東京特別区内にオフィスを設置している主な企業を対象とした「移転経歴データセット」の作成に取り組んだ.このデータセットには, どの企業(資本金規模, 従業員規模, 業種・業態, 設立年, 本社・支社の別, 機能等)が, いつ(入居期間), どこか照(移転元住所), どのようにして(拡張移転、統合移転等の移転形態)移転したのか, 表章事項として整理されており, オフィス移転を空間的にと照えることができる.また, オフィスビルのスペックデータ(竣工年, 延べ床面積設備, 構造, 所有者, 施工者等)と組み合わせることで, 移転元と移転先のオフィスビルを比較することも可能である. ただし, 「移転経歴データセット」は, 住宅地図の表札情報やNTTタウンページ, 各企業の社史, 『日経不動産マーケット情報』の記事, 現地調査など, 様々なソースか照非定形なデータを取得して作成しなければならない.また, 商業誌の記事の場合, 話題性のある企業やオフィスビルにバイアスがかかるため, 中小規模企業の移転状況は把握し難い. 以上の課題を克服する一つの試みとして, 現在, 不動産仲介会社が所有する賃貸オフィスビルの入退出データに注目している.不動産仲介会社には, 仲介した物件の入退出に関するデータが, 過去15〜20年にわたって蓄積されている.特に過去のデータは, 社内でいわば死蔵される場合が多く, これらのデータをいかに入手して, 今後の研究に役立てていくのかが, 目下の課題である.
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