2009 Fiscal Year Annual Research Report
オフィスの2010年問題と大都市圏の再編に関する研究
Project/Area Number |
20720221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 英人 Teikyo University, 経済学部, 講師 (00396798)
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Keywords | オフィス移転 / フィルタリングプロセス / オフィスの2010年問題 / 東京大都市圏 / 都市地理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、団塊世代の大量退職に伴うオフィスビルの供給過剰問題(オフィスの2010年問題)に着目して、東京大都市圏におけるオフィス立地の再編メカニズムを解明することである。本年度は、前年度に作成した「オフィスの移転経歴データセット」の精緻化を図りつつ、本データセットを用いて、オフィス移転の特性を分析した。2002年4月から2007年4月までの5年間に、東京大都市圏内で移転した企業数は、のべ772件であった。この772件について分析すると、まず、移転元と移転先の地理的分布は、両者ともに、都心3区(港区、千代田区、中央区)と、それに隣接する周辺2区(渋谷区、新宿区)に集中している。移転元と移転先の座標値から、移転距離を計測すると、500m未満の割合が全体の18.7%と最も高く、オフィス移転は都心を中心とした短距離移転で構成されている。次に、移転パターンを市区町村別に集計すると、都心3区と周辺2区での同一区内移転が、極めて多い。不動産シンクタンクへの聞き取り調査によれば、オフィス移転が同一区内の短距離移転で構成される要因は、「移転による電話番号の変更が不要になる」ことや、「従業者の通勤の負担が最小限に抑えられる」ことである。さらに、移転形態別およびビル竣工年次別に分析すると、移転元よりもオフィス床面積を拡大させる「拡張移転」、または、分散したオフィスを集約させる「統合移転」が多く、既存ビルから築浅ビルへ移転する傾向が強い。 以上のように、「新・近・大・柔」を兼備したビルであれば、今後も需要が見込まれるものの、老朽化した中小規模ビルでは、テナント企業の確保が困難となろう。特に大手企業が、築浅の大規模ビルに移転する傾向にあり、既存の中小規模ビルでは、入居テナント企業の選別格下げ(フィルタリングダウン)や空室率の上昇が憂慮される。オフィスとしての役割を終えたビルをいかに利活用すべきか、爾後の課題である。
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