2008 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌ民族の「儀礼用冠」に関する実証的研究とその現代的意義
Project/Area Number |
20720233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 幸治 Hokkaido University, アイヌ・先住民研究センター, 助教 (10451395)
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Keywords | アイヌ民族 / 物質文化 / 博物館 / 先住民族 |
Research Abstract |
本研究は、文化人類学、とりわけ物質文化研究が、現在に生きる先住民族といかにして互恵的関係を築きあげていくことができるのかという問題関心に立ちつつ、現在、アイヌ民族による儀礼の場で頻繁に使用されている民具を取り上げ、その多様性を学術的に明らかにするとともに、その成果の効果的な還元のあり方を検討することを目的として実施している。本研究では、北海道アイヌの男性が儀礼の場で被る「儀礼用冠」を研究対象とし、文献資料および博物館資料を対象に調査を実施した。 文献資料調査では、製作技術も含め現在のアイヌ民族の儀礼では見ることのできない「儀礼用冠」の多様性を、ある程度まで確認することができた。とりわけ、先端部に付く木彫(クマ等)の多様性は、本研究のなかで重要な意味を持ってくることが推測される。 博物館における調査では、資料調査とともにアイヌ民族の工芸家との意見交換をおこなった。そのなかで、アイヌの伝統文化に関わる人々のなかに、それぞれの出身地(地元)に根ざした文化復興および継承活動を希望し、その一つに「儀礼用冠」が含まれていることが確認された。一方で、上記のような希望を実現するためのシステムが充分確立、認知されていない現状も確認された。 現代のアイヌ物質文化研究には、マクロな視野からの研究(地域性など)と、ミクロな視野からの研究(民具の製作技術)の両方が必要不可欠であることが確認され、その効率的なシステムのあり方を模索することも重要な課題となった。
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