2010 Fiscal Year Annual Research Report
アラスカ先住民ユッピックによるコミュニティ発展に資する文化資源利用の研究
Project/Area Number |
20720234
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保田 亮 立教女学院短期大学, 英語科, 専任講師 (80466515)
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Keywords | 文化人類学 / 文化資源 / 先住民 / コミュニティ / アラスカ |
Research Abstract |
本研究はアラスカ州南西部、一ユッピック村落における伝統的住居の復元プロジェクトを事例に、伝統文化の今日的利用が村落コミュニティの維持・発展に果たす役割を検証することを目的としている。本年度は調査村落における伝統的住居の利用状況に関する調査、ならびに同村における伝統的住居利用の歴史についての聞取り調査を行った。また昨年度から引き続いて、本研究に関わる人類学的研究の渉猟をさらに押し進めた。以上の作業を通した成果は以下の通りである。 (1)伝統的住居である「カジキ」が同村住民に利用されなくなった経緯には、「カジキ」が伝統的に有していた多様な用途/役割が村落生活環境の歴史的変化の中で、教会、学校、村公民館、個人所有の蒸し風呂へと徐々に分散化していったことが深く関わっていることが、現地での聞取り調査で得た資料の検討から明らかになった。 (2)復元された伝統的住居を村住民は伝統ダンスの練習や古老の語りを聴く場所として利用していることがわかった。しかし「カジキ」は村落住民の多くが利用する施設とはなっておらず、かつその利用回数も数回にとどまっていることがわかった。その意味で、復元された「カジキ」がコミュニティ開発に果たす役割は、現段階ではさほど大きくないことがわかった。 (3)「カジキ」利用の現状については上述した通りである。しかし文化教育に特化した教育の拠点として「カジキ」の存在を肯定的に評価し、将来的な利用案を検討しようという動きが明らかになったため、今後も「カジキ」を中心とした住民たちの活動を注視していく必要があることがわかった。
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Research Products
(1 results)