2008 Fiscal Year Annual Research Report
法的関係の動態的把握と訴権概念--近代法の再定位のために--
Project/Area Number |
20730001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水野 浩二 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 准教授 (80399782)
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Keywords | 訴権 / 中世 / ローマ法 / 教会法 / 訴訟 / 職権 / 訴訟物 / コミュニケーション |
Research Abstract |
中世ローマ法学・教会法学における、「訴権の使用を軸とした、主体間の関係性を重視した法システム」という仮説、すなわち「発生した紛争の解決手段としていかなる訴権を選ぶかによって主体の地位の法的把握が決定される。その訴権の選択は原告のみならず被告・裁判官とのコミュニケーション・バーゲニングにより変動しうる」という動態的なあり方を実証するために、今年度前半は「研究目標I. アクターを制御する訴権の機能」について、封に関する法的紛争の解決を取り上げた。具体的紛争事例における原告・被告の間のコミュニケーション・バーゲニングの実態と、念頭に置かれていた具体的モティーフを考察し、研究成果として公表した。この際も職権の関与は前提とされていたと解されるが、より直接的に職権の関与を検討するため、後半期にはいわゆるclausula salutarisと呼ばれるフレーズについて検討した。原告は訴状にこのフレーズを記載することで、訴訟物の特定をきわめて大雑把なものに留めることが認められ、職権の積極的介入を請求するものであった。時系列的検討の結果、13〜17世紀におけるこのフレーズの機能には大きく三つの段階を認めることができ、訴訟物特定における職権の役割の変動ときわめて密接に結びついた問題であることが判明した(公表は来年度の予定)。 上記検討の前提として、訴権選択への職権の関与についての先行研究の整理、また「研究目標II.『非形式的手続』におけるアクターと訴権」についても仲裁・簡略手続における訴訟物特定に関する先行研究の整理を行い、また必要な史料・文献の収集を随時行った。 今年度後半からはマックス・プランク欧州法史研究所(在ドイツ)の客員研究員として、同研究所所属の研究者との密な連携を構築することに努め、研究プランの概要を公表することができた。
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Research Products
(3 results)