2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 茂春 Kyushu University, 経済学研究院, 専門研究員 (00432849)
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Keywords | 法と経済 / 不完備契約 / 法的救済 / 契約不履行 |
Research Abstract |
本研究では不完備契約のモデルを用いて、従来ほとんど研究されていない双方不履行時の法的救済制度の効率性を分析する。従来の法的救済制度の経済分析では基本的に売買契約などの双務的契約を扱っている。しかしながら、多くの先行研究では契約不履行を起こす可能性があるのは一方の当事者だけという設定がなされている。現実の取引では契約の両当事者に不履行を起こす誘因があると考える方が自然である。そこで、本研究では売り手、買い手の双方が不履行を行う可能性のあるモデルを構築し、実際に行われている両側の(売り手、買い手の両当事者のどちらかが契約不履行したときに被害者に適用される)法的救済制度の効率性を比較検討し、より効率的な法的救済制度は何かを示す。 平成20年度は、法的救済の賠償額の決定方法を3つのルールに分類して比較した。すなわち、期待利益ルール、信頼利益ルール、原状回復ルールである。従来の研究では、契約不履行の効率性について、期待利益ルールが常に効率的であり、信頼利益、原状回復ルールでは過小履行をもたらすことが知られているが、その多くが売り手のみが契約不履行を起こすという前提の下で示されたことである。実際の取引では買い手も契約不履行を起こす可能性があるので、この点をモデルに取り入れた分析を行い、各ルールにおいてどのような契約不履行が行われるのかを示した。さらに、買い手が信頼支出を行う場合に、その信頼水準の効率性がどのようになるかを検討した。この分析により、従来の売り手のみが契約破棄を行う可能性がある特殊ケースと比較して、買い手が契約破棄を行う可能性がある場合は各賠償額決定ルールにおける信頼水準の決定に違いが見られた。以上の成果を論文として作成中であり、平成21年度の法と経済学会において報告する予定である。
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