2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 茂春 長崎ウエスレヤン大学, 現代社会学部, 准教授 (00432849)
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Keywords | 法と経済 / 不完備契約 / 法的救済 / 契約不履行 / 期待利益ルール |
Research Abstract |
本年度は前年度の研究で課題とされていたモデルの一般化と研究成果のとりまとめを行った。モデルの一般化については売り手と買い手の双方が不確実性に直面しているケースにモデルを拡張させ、これまでの分析で問題とされた売り手と買い手の非対称的な結果を改善するようにした。 研究成果としては、早期にとりまとめた結果が論文「契約破棄と両側の法的救済」として掲載される。この論文では契約当事者の双方が契約破棄を行う可能性がある場合に協力的投資モデルを拡張すると、異なった結果が得られることがわかった。とりわけ、双方の期待利益を比較して、負の賠償まで行わせる厳格な期待利益ルールにまで拡張すると、ファーストベストが達成されることが示された。すなわち、従来の法的救済ルールの下では、双方が契約破棄を行う可能性があっても、ほぼ同様の結果が得られる。しかしながら、賠償額を厳密に履行させる厳格な期待利益ルールの下では、ファーストベストを導く価格契約が作成可能である。そのため、Che and Chung(1999)などの従来の研究での協力的投資モデルでは信頼利益ルールが望ましいという結果と異なり、協力的投資モデルの下で厳格な期待利益ルールが望ましいという結果が得られる。また、双方が契約破棄を行う可能性を考慮した法的救済ルールの定式化は確定した方法がなく、その一つの方法を提示したと言うことで、重要な意味があると思われる。
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